2013.11.07
社員コラム
釈然としないニュース
著者:谷尾 準一
先日、気になるニュースを新聞で見つけました。
「大手損害保険会社は暴力団関係者が保険を契約できないようにする。来年9月までに自動車、火災保険などの契約条件を定めた約款に、暴力団排除条項を盛り込む。契約後に暴力団関係者と分かった場合も解約に踏み切る一方で、被害者には保険金を支払うなど救済措置をとる」(某新聞 「損保が暴力団排除規定」のニュース)
某大手金融グループの暴力団への融資問題が露わになってから、反社会的勢力との関わり方に改めてスポットが当てられています。
このニュースでは、大手損保が、保険契約後に暴力団関係者と分かった場合に、契約解除に踏み切れるよう契約約款に「暴力団排除条項」を盛り込むことになったことが報じられています。記事では「被害者には保険金を支払うなど救済措置をとる」とされていますが、「今後は暴力団関係者が加害者の時は原則、自賠責以上の保証は受けられない。自分が補償される保険に入るなどして、自衛する必要性が高まりそうだ」とも記されています。
損保各社が「暴力団排除条項」を設けることは理解できますが、損保各社が暴力団との関係を断つために、一般人が、暴力団関係者が加害者となる事故の被害者になることに備えて、新たに補償を準備する必要が生じるというのは、なんとなく矛盾があるようで釈然としないものでもあります。
「そもそも、今回の措置が暴力団関係者にお金が渡らないようにすることが目的であるのであれば、車両保険や傷害保険部分(被保険者に保険金が支払われるもの)の引き受けを制限し、一般人被害者救済の観点から賠償責任保険部分(対人賠償責任、対物賠償責任)については引受を行うべきではないか?」
「加害者ではなく、被害者が暴力団関係者であった場合の保険金支払いの判断はどうなるのか?」
損保会社が暴力団関係者だと分かった時点で契約解除できるように契約内容を変更したいのは理解出来ます。しかし、「暴力団排除条項」が、保険会社を守ることだけに利用され、一般人及び一般契約者を守るという本来の目的が疎かにされることのないよう、慎重に判断した上で策定していただきたいものです。
お客様統括グループ
谷尾 準一